memo

混沌の状態とは、思想のなかに、まとまったみちすじがまだできない状態である。古い正統的考え方が失われ、新しい正統的考え方がうちだされていないという、中間的な状態である。

そういう混沌の状態に対して、ぼくたちははがゆく感じる。日本人は、辛抱がない。
混沌の中から自発的に健全にのびてくる思想を愛することがなく、外気からはなれた特別の暗室で思想を発芽させ、あおじろいひょろひょろの思想をいくつも促成栽培することで、満足している。明治・大正・昭和を通じて、このせっかちな態度のために、日本の土に根をおろして育った強い思想は、成立しなかった。

(限界芸術論/鶴見俊輔から引用)




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