memo4

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人間の歴史は、ブレーキの無いまま、ゴールの見えない霧の中を走り続けている。だが、もし人間がこれからも存在し続けてゆこうとするのなら、もう一度、そして命がけで、ぼくたちの神話をつくらなければならない時が来るかもしれない。
(p129)
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私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生き延びるのかという終わりのない日々の選択である。生命体の本質とは、他者を殺して食べる事にあるからだ。近代社会の中では見えにくいその約束を、最もストレートに受け止めなければならないのが狩猟民である。約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。そして、その悲しみの中から生まれたものが古代からの神話なのだろう。
(p187)

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旅をする木/星野道夫




「犠牲の上に生きのびる」という単純な言葉を、現代社会に当てはめて人と人どうしに反映させるようなこととは全然違う。本当の意味で「殺す」こと、暖かい血の匂いや折ったばかりの山菜の瑞々しさに感動すること。喜ぶことと悲しむことが同時に「殺す」ことには存在する。
狩りをする事よりはやわらかくなるのかもしれないが、畑を耕すという行為でさえ、地中の虫のいくらかの命が絶えるという事実を作り出すことに驚いたことがある。畑をつくる、というプロジェクト中に、些細ではあったがたくさんの虫や草を殺した。

笑い事のように単純に、生きることの、悲しみと脆さと偶然性に魅力を感じます。
この本には素直にそういう物事を不思議がり、感動を持って受け入れる魅力がある。
彼のアラスカの生活と、私の子供の頃の北海道での生活は少しだけ被るような気がすると思って読んでいた。これは北方圏の繋がりのせいなのか、日本人としての感受性ゆえなのかはわからないけど。
自然についての問題提起はひとつもされていないけれど、現代人すらも包み込む自然そのものがどれほど尊いかが伝わってくる文章。

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