スナップショット 写真の輝き

未知は既知の同一性に素早く転送されてしまう。こうした希望と危機の表明は、そうした現実の土地を好んで複写してきた写真とその批評にとって、明らかに共有されうるものであった。 活性化の希望とこれまで以上の不活性へ落ち込む危機。相反する二つの価値を含みもつデュナミス(潜勢態・可能態)として捉えられうるテラン・ウ゛ァーグ[空き地]。(中略)政治性を強力に前景化した二〇〇二年の「ドクメンタ」のコンセプトに要約されるまでもなく、より旗幟を鮮明にし、態度決定をその都度貫徹することが一層制作者に求められることだろう。かつて十八世紀のイギリスを中心に広く確立された地誌的な風景画は、かえって匿名の風景、形容詞のない「風景」を自立させる起点となった。現在問われているのは逆に、匿名的な風景に「地名」を再び与えるための、しかるべき方途かもしれない。



p222-223
倉石信乃 『スナップショット 写真の輝き』2010

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