VOCA出品作の制作時期のこと

VOCA展2024で、「非在の島、あるいは逆流の生理」というタイトルで発表した作品。作業風景の様子を載せておきます。





ターポリンに印刷した写真を変形パネルに沿わせて貼り付けたのだが、動物の皮を扱っているようでかなりテンションが上がる作業だった。

推薦者(高橋しげみさん)から打診を受けたのは5月中旬で、これはかなり早いご連絡だったと思う。
そこから出品規定を意識しつつ、構想を始めました。当初アクションの映像記録も検討しており、山に登ったり、海を歩いたり、いろいろと試したがなかなかしっくりこなかった。
7月を過ぎると猛暑になり、蚊も多い時期で、野外に出ても色々危険なので、研究活動に時間を割いてやり過ごした。
8月からは要素を絞っていく作業に切り替えた。
思考は言語と非常に強く結びついているので、まずは2本ほどエッセーを書いた。最近は、言語に還元できる思考は造形では取り扱わなくて良いだろうと思っているところもあるので。
その時書いた原稿は、少し清書して、寄木塚2号、3号に掲載している。(「イソツツジ」、「非在の鳥の渡り島」)

その後、造形表現による思考に切り替えることができた。
数ヶ月検討していたが、大型の変形パネルに写真を貼り付けることに決めた。
ただ、出荷は11月中になると事務局から予め連絡を受けていた。
昨年は仕事でも写真研究でも10月〜11月中にそれなりの成果物の提出を求められていたので、非常に多忙で、自力でパネルを作る時間もなければ、制作場所が確保できないのも分かりきっていた...。
ここで、いろいろと割り切って、知り合いの家具工房に変形パネルの製作を依頼することにした。
KIKUwoodworksさんである。

そしてその合間に作品の素材になる写真を撮影、印刷する算段にした。
計画では9月中に撮影予定だったたが、昨年は9月に入っても猛暑が続き、おそらく思ったような写真が撮れないだろうと思って撮影行はちょっと我慢することに。結局10月の撮影データを印刷に使用した

KIKUさんには変形パネルを自宅に持ってきてもらえればと思っていたが、制作や発送までご協力いただけることになり、代表菊地さんや職人さんの助けを借りて、工場で作品を完成させました。完成翌日に推薦者の高橋さんが下見のため来道。
その後は、発送まで工場に預けることに。

その数週間後の11月のある朝、私は激しい頭痛と吐き気に襲われ混乱し、自宅で耐えていたところ、家族に発見され、助けを借りて病院へ行った。
脳卒中を発症していた。
そのまま緊急入院し、集中治療室に入れられた後、カテーテル手術と開頭手術を受けた。
出血した脳血管ごと脳の一部を切除したらしく、また麻酔の副作用も数日強く出て、入院中の状態は非常に過酷だった。
家族や仕事、研究、美術制作の関係者全員に過労を疑われたが、先天性の奇形動静脈瘤が原因だとのことだ。幸い、運動や認知機能、言語機能等々には後遺症なく退院できた。
ただし、視野の一部が欠損した。
半盲状態になる場合もあるような箇所から出血したそうなのだが、それは免れたし、死ぬこともなかった。とにかくこの事実を受け止めるしかないと思う。

前述の通り、作品はwoodworksの工場で制作し、そのまま発送する予定で作品を預けていたので、私の入院中に菊地さんの手で出荷していただくことが出来た。
入院中は、ほぼ半盲に近い状態だったので人との連絡は全くままならかった。出荷対応してくれた菊池さんには感謝しかない。

菊地さんたちがこれまで育ててきた家具ブラント「WOOD LINK」は知床産の木材を使った様々な商品を生産している。
代表菊地さんは斜里町出身だそうで、隣町・羅臼町の元在住者としては、土地の繋がりも感じていたので、今回一緒に作業ができたのは嬉しかったのですが、混乱させてしまい、大変だったと思います。

家具ブランドWOOD LINKについてはこちら。
素敵なカフェも営業しているので、ぜひ遊びに行ってください。私も、もう少し体力が戻ってきたら、まずは遊びに行きたい。 

ちなみに、入院中の全く眠れない夜の日々に、「VOCA展出品に寄せて」というテクストの構想が出てきたので、退院後の目があまり見えない時期に書きはじめて、このブログにあげた。さらにこれを清書したテクストは物販コーナーで「寄木塚1-3号セット」に入れて販売したのでこれもここに書いて記録しておく。(ネットでも先行発売していた。 https://yorikitsuka.base.shop/items/83707405 


以下は、撮影地周辺の風景。春頃にたまたま入り込んだ湿地で、良い場所だったので撮影候補地の一つにしていた場所。(実は、最初に見つけた時に撮影した写真は、寄木塚2号の詩ととも掲載してある。その時はあまり意識していなかったが、だんだんウエイトの重いイメージになっていった。)
本番の撮影では、赤味を強くするため、日の出日の入りの時間帯を狙って数日通った。風が強く吹いていて雨がきそうな日で、それもよかった。そういう時は光の赤みも増すから。このほかにさまざまな場所で映像や写真を撮影していたが、結局ここの写真1枚だけ使った。




コメント