北のヤシの木

先週末、黒松内町のブナ林が天然物指定から90周年ということで、講演&森歩きのイベントがありました。残念ながら怪我のため森歩きには参加せず、講演会の午後だけ参加してきました。
:余談ですが、黒松内町の佐藤斉学芸員さんが撮影しているブナ写真のクオリティが高くて(道内自然雑誌「ファウラ」のブナ林特集で表紙を飾るレベル)、配布物のクオリティが一段と増していました。うらやましいですね。

「ブナの森からの贈り物」
2018年5月26日、27日
http://user.host.jp/~bunacent/BUNACENT/H30_90chirashi.pdf

数名の講演の中で繰り返し、象徴的に使われた、ブナ林発見時のエピソードがありました。
林学博士の新島善直が、北限のブナ林調査時に、黒松内のブナの樹形を見て感動し「まるで北のヤシの木だ」という言葉を案内人の村人に漏らし、天然記念物指定の調書を提出するに至ったそうです。

新島のこのフレーズがよほどキャッチーだったのか、町民の方が「北のヤシの木」というシナリオを書き、市民劇として何度も町民で劇を行っていたそうです。今回イベントの午前の部では、その記録映像も上映されていたとのこと。朝から参加すればよかったかなあと少し後悔。

今回は北大苫小牧研究林の日浦勉先生から、その黒松内ブナのスラリとした樹形こそ、高緯度のブナ特有の樹形であることを、全国のブナの定量調査の成果を元にご説明いただき、近隣市町村民一同で膝を打ちました。

ブナは、漢字で書くと「橅」となります。かつては建築材そのほかの経済用途としては役立たずであると考えられて薪や線路の枕木に用いられたそうです「木であって、木でない」のが橅の謂れとも言います。日本の広葉樹林の中で占める割合が最も大きい優先樹種で、あるのが当たり前の樹木だったのも、それぞれの ブナにとっては不幸だったかもしれません。
それがこの北の果てで、このように市民に愛され、文化的象徴としてあるということは、どういうことなのでしょうか。
例えば宗教でも象徴的に扱われる樹木(菩提樹、銀杏、椿、バラ等)があります。しかし、宗教信仰でも経済信仰でもない有り様、21世紀的価値観、エコロジーの時代だからこその価値観が、ここに体現されているのかなあ...などと、ふつふつと考えつつ会場を後にしました。
本州の自然に対する価値観と、北海道の環境の齟齬が生み出した、新しい価値だとは言えそうです。

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